教育・研究トピックス

丸山優樹さん:セネガル・サンルイでの半年間の滞在記録 ②

生命環境科学研究科
国際地縁技術開発科学専攻
3年
丸山 優樹

食生活

セネガル滞在中の研究活動にもつながるが、セネガルをはじめとする西アフリカ諸国は、近年、コメ食文化が急速に広がっている。FAOSTATのデータによると、セネガルでは一人あたりのコメ年間消費量は約75kg (日本が約55kg)と大変多くのコメを消費している。コメ食文化が定着している日本人にとっては、大変生活しやすい環境である。
さらに、セネガル料理は筆者の口に合うことから、食べ物には全く不自由しなかった。特に筆者が強く薦める「チェブジェン(ウォロフ語で魚飯の意味)」は、たっぷりの野菜と魚を使用した炊き込みご飯であり、本当においしい料理である(写真7)。チェブジェンの特筆すべき点は、米粒が割れた破砕米(日本で言うクズ米)を好んで用いる点にある。この破砕米文化は、セネガル周辺の国々のみに見受けられる特徴であり、精米業者は、あえてコメを砕いて販売することもある。硬めに炊きあげられた破砕米は、魚や野菜から出るスープが染みやすく、現地の食文化に根付いた個性的な料理である。

写真7: セネガル伝統料理: チェブジェン

 長々と筆者の愛するチェブジェンについて語ってしまったが、チェブジェンには欠点が1つあり、大量の油を使うために、大量に食べると胃がもたれる。そのため、滞在中は独自のルールを作り、お昼は研究所の食堂でセネガル料理を食べ、朝食と夕食は自炊した日本食を食べて、日々の体調を整えていた(1日1回はセネガル料理・文化に触れあいたいという想いも影響している)。
サンルイには、スーパーマーケットは1つもなく、野菜や魚は道路沿いで農家がパラソルを立てて販売しているものを買う(写真8)。牛肉も同様に売られているが、品質の観点から、日本人には勇気のいる購入になる。そこで、町中を歩き回り外国人向けの肉屋(冷蔵機器を備えたガラスケースで保存)を発見し、少し高価ではあるが、そこで購入していた。また、露店での購入は全て交渉性である。ご存知の通り、外国人に対しては倍額以上の価格が提示され、そこから交渉スタート。1つ1つ手に取って品質を見極めながら選び、粘り強く交渉をすることがポイントである。また、何度も同じ露店で購入し顔見知りになる事もぼられない秘訣のように思う。魚に関しては、10時頃と19時頃の二回、水揚げされた新鮮な魚が露店に出回るため、その時間に合わせて買い物をしていた(一度刺身を試みたが、おなかは壊さなかった)。サンルイはセネガル川の河口に位置するため、魚介類は豊富であり、サバ・タイ・エビ・タコ・イカなど多種多様な魚が並ぶ。魚好きの筆者にとっては、この上ない幸せである。
他方、筆者は無類の納豆好きであり、指導教員が国際学会時に持参してくれた納豆菌を使い、自宅で納豆生産をしていた。美味な納豆を作ることに全力を注ぎ、豆を炊くための圧力釜や発酵を促すために、保温用のクーラーボックスも購入した。しかし、残念なことに市販の納豆には到底及ばない完成度であり、こちらの研究も今後続けていく必要がある。
最後に、日本食の入手が困難なセネガルに持参し役立った調味料は、めんつゆ・粉末状のすし酢・味噌である。めんつゆは出汁も含まれるため、砂糖を加えるだけで煮つけや親子丼、お浸しなど多種多様な日本食が簡単に作れる。また粉末状のすし酢は、水に溶いて使えば酢の物・南蛮漬けなど酸味の利いた料理を簡単に作れる。一年中暑いセネガルでは酸味は食欲をそそる最高のスパイスである。

  

写真8: 露店の風景と日々の買い物

休日の過ごし方 

このように書くとセネガルの方々に怒られるかもしれないが、イタリアやフランスのような観光名所は、非常に少ない。首都のダカールには、赤色の湖(ラックローズ)や奴隷の歴史が学べるゴレ島などがある(筆者はそのうち訪れようと思っているうちにコロナ禍に巻き込まれ、訪問できなかった)。地方にも歴史的な建造物や自然公園(サンルイにはジュジュ国立公園(写真9)があり、子育てのためにペリカンの群れが飛来する)はもちろん存在するが、観光用に整備がされておらず、荒廃している。また、サンルイには映画館などの娯楽施設もない。しかし一歩町に踏み出せば、写真やテレビでしか見たことのない、アフリカ特有の文化に触れあうことができ、カメラを首に下げて歩くだけで十分楽しい休日になる。

写真9: ジュジュ国立公園に群がるペリカン(約25000羽)

 他にも、サンルイにはJICAのコメ増産プロジェクト(PAPRIZ)が進行中であり、コンサルタント会社の方々が数名在住している。また研究所には同年代の韓国人研究者も在籍しており、その方々の自宅に行き、一緒に食事や会話を楽しむことも多かった(写真10)。このコミュニティは大変重要であり、お互い似たような問題を抱えているため、解決方法を教えてもらえる。そして何といっても、食材に関する耳より情報を集められる。「○△×町のガソリンスタンドの横にある卵屋さんは30個入りで1700CFAだよ!」「床屋の横にある黄色い店の野菜は鮮度が良い!」「あそこで買うとビールは安い!!(写真11)」などなどメモ帳必須の飲み会が頻繁に開催される。

 

写真10: 韓国料理パーティー(作: 韓国人研究者王さんの奥様) 写真11: セネガル産ガゼルビール

さらに、ダカールにはチャイナタウンや大型格安スーパーも点在する。チャイナタウンでは豆腐や大豆、カニカマ、中華麺などが売られ、スーパーでは、イスラム教徒が人口の95%を占めることもあり、入手困難な豚肉製品(ハムやベーコン)、その他の生活用品(柔軟剤やトイレットペーパーなど)などを購入できる。幸いにも韓国人研究者(王さん)が車を持っていたため、彼がダカールに行く際に、同乗させてもらい、買い物に行っていた。王さんには、研究生活においても本当にお世話になり、セネガル滞在中に得られた最高の宝物である。
最後に、筆者は魚好きが高じて、釣りも大好きである。セネガルでも釣り好きを集めて勝手に「アフリカ釣り部」を結成し、ダカールで釣りを行った(写真12)。結果は無念にも小魚が数匹釣れた程度。自給自足を目指していた筆者を断念させる決定的な出来事となった。

写真12: アフリカ釣り部の活動

 

セネガル・サンルイでの半年間の滞在記録 ③へ続く