教育・研究トピックス

構内植物ガイドツアーみどり散歩 ~サクラ 編~

上條 隆志 教授

                                                                                                                                                                                                                                                 

学内には数多くの樹木が植栽されている。例年、みどり散歩の時期には、サクラの花は終わっているため、サクラ達の紹介はできなかった。本稿では、学内のサクラについてその一部を紹介したい。

3月初めが見ごろのサクラ:カンヒザクラとカワズザクラ

天久保池の周りには、ソメイヨシノ以外にもカンヒザクラとカワヅザクラが植栽されている。この天久保池のカワヅザクラは花付きもよく、見栄えがよい。少し離れたところに、カンヒザクラも植栽されている。本種は中国原産とされ、花は赤みが強く下向きに咲き、がくと花弁が一緒に落ちるのが特徴的である。カワヅザクラはオオシマザクラとカンヒザクラの自然交雑により生じたとされている。

カンヒザクラ(2020年3月7日) 天久保池

カワヅザクラ(2020年3月7日)天久保池

カンヒザクラ(2020年3月31日)天久保池

カワヅザクラ(2020年3月7日) 天久保池

 

エドヒガンと八重紅枝垂

エドヒガンは栽培品種のような名前であるが、日本に自生するサクラであり、本学の井川演習林(静岡県)周辺でも川沿いに本種の野生のものを見つけることができる。本学正門を入ったところに植栽されているサクラは、エドヒガンの栽培品種である八重紅枝垂である。東京教育大から移植された由緒ある木であるが、近年衰弱が著しい。写真の八重紅枝垂は、この木から接ぎ木によって育成されたものである。八重紅枝垂は、遺伝子実験センターの近くなどにも植栽されている。一方、エドヒガンについては、学内の目立つところにはなく、植物見本園の苗畑にのみ植栽されている。がく筒がつぼ状になっているのが特徴的である。なお、学内では、マメザクラが同じくつぼ状になる。紹介したいところであるが、今回は紙面の都合で割愛する。

エドヒガン(2020年4月3日)植物見本園

八重紅枝垂(2020年4月3日)植物見本園

葉も楽しめるヤマザクラとオオシマザクラ

ここまで紹介したサクラやソメイヨシノは、葉が出る前に花が咲く。一方、ヤマザクラとオオシマザクラは、葉と花が同時に出る。花の色で木全体が一色に染まる美しさとは、また異なった良さと味わいがある。ヤマザクラは赤みの強い新葉が特徴的なのに対して、オオシマザクラは緑色の葉を展開する。なお、葉の色は成長段階で変わり、個体によって変化に富む。見分けには注意を要するが、その変化を観察することも面白みの一つである。

ヤマザクラ(2020年3月27日) 総合研究棟A近く

オオシマザクラ(2020年3月27日)虹の広場

サクラの代表ソメイヨシノ

最もポピュラーなサクラであり、学内にも多い。ソメイヨシノは、今日紹介したエドヒガンとオオシマザクラの雑種とされ、両種の中間的な形質を持つ。たとえば、そのがく筒は少しつぼ状になっており、エドヒガンの形質を受け継いでいる。なお、オオシマザクラには、このつぼ状のくびれはない。

ソメイヨシノ(2020年3月27日)3K棟近く

 

文責 上條 隆志(=> 研究者総覧TRIOS

研究分野
■森林生態環境学
研究内容
■森林生態系の維持機構と機能に関する研究
■植生とその管理に関する研究
■半乾燥地の植生と復元に関する研究
■希少生物の保全に関する研究
■火山島における森林生態系の維持・成立メカニズム