研究室にようこそ!

個性豊かな研究室を紹介します。

日下研究室

日下 博幸 教授 KUSAKA Hiroyuki

~都市気候・山岳気象研究グループ~ 計算科学研究センター 地球環境研究部門 部門主任

 

私たちの研究室では、スーパーコンピュータを用いた数値シミュレーションや野外観測をみんなで協力しながら実施し、都市が生み出すヒートアイランド現象、ゲリラ豪雨、熱中症や、山岳が生み出す笠雲、局地風(地域風)、フェーン現象などの身近な気象の未解明問題にチャレンジしています。個々の研究テーマについては、後ほどあらためて紹介しますね。

日下研究室は、2007年に私と5人の地球学類生によってスタートしました。2021年現在、27名の大所帯となりましたが、初心を忘れずに世界最高レベルの研究グループになることを目指して、みんなで一緒に日々頑張っています。国際社会で活躍するためには、優れた研究成果を出すことはもちろんのこと、国際交流も大事です。私たちは、気象学分野における世界最高峰の研究機関であるアメリカ国立大気研究センター(NCAR)をはじめとする欧米アジア7カ国の研究機関と連携協定・共同研究を行い、若手研究者や学生の国際会議での発表や国際誌への論文投稿を奨励・サポートしています。

海外の共同研究者らの前で院生が研究成果(修士論文の内容)を発表

フェーンの本場であるアルプスのインスブルックで、現地の先生方と一緒に調査

研究テーマ紹介~身近な気象現象の未解明問題の解決~

都市があることで形成される都市特有の気候のことを都市気候といいます。都市の気温が郊外よりも高くなるヒートアイランド現象が有名ですね。私たちはこれまで、スーパーコンピュータと領域気候モデルを用いて、世界に先駆けて本格的な都市気候と熱中症リスクの将来予測を行いました。また、都心のいわゆるゲリラ豪雨がヒートアイランド現象の影響によって発生しやすくなっていることも明らかにしました。これらの成果は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書や世界中で読まれている都市気候学の教科書などで紹介されました。また、これまでの研究成果が認められ、大学院生たちが2018年から2020年まで3年連続で日本生気象学会や日本ヒートアイランド学会から表彰されました。2021年には、わたくしもアメリカ気象学会(AMS)から国際的な賞をいただきました。アメリカ気象学会で日本人が受賞するのは大変めずらしく、現役の研究者ではたったの2人しかいません。その一人が筑波大学にいるということが、少しでも地球学類や地球科学学位プログラムのアピールに役立てばよいなと思っています。

私たちは、自分たちの手で都市街区気象シミュレーションモデル(ソフトウエア名 City-LES)を開発してきました。現在は、世界最高空間分解能を誇るこのCity-LESを用いて、少しでも住みやすい都市にするための最適な暑熱対策を提案するための研究を行っています。もちろん、涼しい部屋でシミュレーションをするだけでなく、暑い中観測も行っています。City-LESが世界中で利用されるようなモデルとなり、世界をリードする研究成果を発信していければいいなと思っています。

都市街区気象モデル「City-LES」による東京駅周辺の気温予測の結果

私たちの研究室には、日本全国から学生が集まってきます。つくばおろしや六甲おろしに代表される局地風(地域風)は、そんな地方出身の学生たちに人気の研究テーマの一つです。これまで、砺波平野の井波風、関東平野の空っ風、濃尾平野の伊吹おろし、阿蘇カルデラのまつぼり風など、さまざまな局地風の実態を明らかにし、その吹走メカニズムを解明してきました。局地風の研究の場合、現地に行って風や気温を測ったりすることも多く、野外活動を好きな人にとってはもってこいのテーマといえます。上空の風を測るためには、大きな風船を飛ばしてそれをGPS受信機か経緯儀で追いかける必要があります。大学院生にとって、後輩の学類生に熟練の技を見せるよい機会となっています。

局地風の研究では、スーパーコンピュータも活躍します。最近、スーパーコンピュータを使って、過去10年間に富山平野で発生したフェーン現象198事例のうち、教科書で良く見るフェーンのタイプはわずか1%しかなく、80%以上はそれとは異なるタイプであったことを発見しました。教科書に書いてあることの中にも、実は正しくないものはあるかもしれません。これについては、研究を続けて慎重に判断していきたいと思います。そして、今後も気象学・気候学の常識を再考察させるような研究成果を発信していきたいと思います。

経緯儀を用いた風の観測の様子。風船を上手に追いかけるには訓練が必要

ライブカメラで撮影した富士山の吊るし雲

最近、富士山にできる笠雲や、吊るし雲、旗雲の研究を始めました。どうしてこのような特徴的な雲ができるかなど雲に対する強い好奇心を持って、みんなでワイワイしながら楽しく研究しています。毎日、雲の動画を見て観察日記をつけるという地味な作業と、スーパーコンピュータを用いた超高解像度シミュレーションという派手な作業の二刀流で研究を行っています。学生たちが面白い結果を続々と出しています。現在、論文を執筆しています。期待して待っていてください。

日下研究室は、都市気候と山岳気象の研究室です。

都市の暑さをなんとかしたい方、風や雲が大好きな方、気軽に遊びにきてください。

そして、将来ぜひ一緒に研究しましょう!

筑波大学計算科学研究センターにて、お待ちしています。

 

計算科学研究センターが運用するスーパーコンピュータCygnusの前で

 

参考ウェブサイト


■日下研究室HP

http://www.geoenv.tsukuba.ac.jp/~kusakaken/

■日下研究室 Twitter

@lab_kusaka

■日下博幸教授 Researchmap

https://researchmap.jp/7000020562

■都市街区気象モデル(City-LES) Youtube

https://www.youtube.com/watch?v=skww7seAp28&t=235s

■計算科学研究センター Youtube

https://www.youtube.com/watch?v=RmXHPE5eY7k

研究者総覧 TRIOS


日下 博幸