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【研究室にようこそ!:番外編】ミツバチ先生のむしムシ紀行① 

保全生態学研究室 横井智之 助教

ヌルデフシダニ

皆様こんにちは。むしムシ紀行担当の横井です。さて、写真に写っているのはヌルデの葉です。ヌルデはウルシ科の植物なので、ウルシほどではないですが、葉に触るとかぶれてしまう人もいます。見つけたらそっと眺めるだけにしてみましょう。

この葉の表面には変なぶつぶつができています。まるでヌルデ自体が何かにかぶれたかのようになっていますね。このぶつぶつは、ヌルデフシダニというダニが葉を吸汁したことで、葉が変形してできあがった「えい」(別名:こぶ、ゴール)なんです。

ちなみにダニは昆虫ではなく、クモに近いグループです。「えい」ができるのは、ダニやアブラムシ、タマバエ、タマバチなどが、葉や茎などに産卵したり吸汁したりする刺激が原因です。この刺激を受けて、植物の細胞が異常に大きくなったり、縮んだり、変形して作られます。

一般的には「虫こぶ」と呼ぶことが多いですね。他にも菌や細菌によっても作られることがあります。刺激を与えてくる生物が違うと、植物にできあがる「えい」の形状も異なってきます。大きなごつごつした塊のようなものから、きれいな球状のものまであります。このように「えい」に特徴があるため、どんな生物がつくったものなのかはすぐわかります。そのため、昆虫図鑑のように、虫えい図鑑やハンドブックがあるぐらいです。

今回ご紹介した、ヌルデの葉にできた「えい」は、ヌルデハイボケフシと呼ばれています。この「えい」をよく見ると、表面は膨れ上がり、裏側はへこんでいます。葉の裏側のへこんだ場所を、ヌルデフシダニは生息場所としています。小さなこぶが彼らの家になっているわけですね。実はヌルデには、ヌルデシロアブラムシが葉につくる、ヌルデミミフシ(別名:五倍子)という巨大な「えい」ができることもあります。どちらも生き物たちがつくりだした不思議なかたちです。機会があればぜひご覧ください。

(記事:2023年8月に生命環境Instagramに紹介したものを転載しております)


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