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個性豊かな研究室を紹介します。

筑波大学保全生態学研究室

横井 智之 助教 YOKOI Tomoyuki

~保全生態学研究室~

生命環境系 横井智之 助教

私たちの保全生態学研究室では、身近な環境に生息する生物(特に昆虫類)に着目し、採餌や繁殖行動、生活史、他種生物との相互作用の解明などを通じて、自然生態系における種多様性保全への提言を行なったり農業等への応用利用の可能性を探ったりしています。

ニホンミツバチによるレタスかじり行動の様子

好き嫌いを別にして、皆さんの身の回りに多くの昆虫類が生息していることは周知の事実です。図鑑を開いて見れば多種多様・多型多色の昆虫たちを目にすることができます。一方で、昆虫たちがどんな場所で、どんな活動をしているのかを知ることは少ないかもしれません。たとえば「ハナバチ」と聞いてどんな生物を想像するでしょうか。「ミツバチの仲間かな」という程度のイメージしかないかもしれません。ハナバチ類(Bee)というのは漢字で書くと「花蜂」となるように、花に訪れて、花粉や花蜜を仔のために集めるハチの仲間なのです。地球上に2万種以上も存在し、日本にも多くの種が生息しています。ハナバチの仲間は分類群や種によって形状や大きさ、色にも違いがありますし、行動も多様です。ミツバチが代表格なので、どのハナバチも社会をもつと思われがちですが、大半の種はメスが単独で巣をつくり、子育てをすることも親子が対面することもありません。こうしてみると、ハナバチ類というグループ1つをとってもあまり知られていないことが多いのです。

 

メス越夜集団 (TSUKUBA FUTURE #079:寝姿から探るハチの知られざる生態 で紹介)

私はそんなハナバチ類の行動や社会性に魅力を感じて、メインの研究対象としています。現在は、1.生活史や採餌行動など基礎生態の解明、2.外来植物との相互作用、3.採餌特性を応用した農業利用といったテーマに取り組んでいます。ハナバチ類は種ごとにユニークな採餌戦略をもっていたり、社会性をもたなくとも集団行動をみせることがあったりと、その基礎的な生態を調べるだけでも研究テーマが尽きることがありません。さらに、ハナバチ類をはじめとした、花に訪れて花粉や花蜜を利用する昆虫(訪花昆虫)は、目立たなくとも生態系の中で重要な位置を占めています。私たちの周りにある草地や森、といった自然生態系の中で生育する多くの野生顕花植物の花粉媒介には、さまざまな昆虫類がたずさわっています。一般的には、ハナバチをはじめとして、カリバチやハエ、ハナアブ、コウチュウなどが潜在的な花粉媒介者(ポリネーター)として挙げられています。加えて農耕地に目を向ければ、多くの果樹や露地栽培を行なう果菜類においては、野生の花粉媒介者の存在は欠かせません。その一方で、生息地分断化や環境汚染、外来競争者の侵入などによって、種数や個体数が大きく減少しているという指摘がなされ、欧米各国をはじめ日本でも、その存在と重要性が見直され、保全や管理を行なう動きが広がっています。とはいえ、日本でも花粉媒介者とした役立つ昆虫類の生態や行動に関する研究は、まだまだ十分ではありません。むしろ少ないと言っていいでしょう。その現状を把握し、解決の糸口を見つけるためには、基礎的な面を種・群集といったさまざまなスケールから明らかにしていく必要があります。

西表島でハナバチの越夜場所の観察

ここまで読むと、ハナバチしか扱っていないように思えますが、私の研究室では、学生の間でも研究テーマや対象とする生物は多岐にわたっています。研究したいテーマは自分で見つけることが原則なので、大学生時代の勉強量や視野の広さが問われるかもしれません。メンバーの中には大学1年生の頃から研究をしている人もいます。研究成果は、生態学の最新の情報を熟知した上で、国際誌に投稿することになっていますし、関係分野の学会(国内・国外)で毎年発表を行なうことにしています。そのため、日頃から英語力やプレゼン能力を向上させておく必要があります。ゼミは毎週2日行なっており、学部生の頃から専門分野の論文を読みはじめます。学生主体の運営方式を採用しているので、院生も学部生も下級生の指導を通して大きな力がつきます。多くの学生は、フィールドに出て行動を観察したり、サンプルを実験室内に持ち帰って分析したりしています。調査場所は筑波大学の研究室内からその周辺、筑波山、関東周辺、長野県白馬・菅平・飯島、沖縄県の離島などさまざまです。もちろん室内で飼育して実験も行なっています。時には長時間の観察や天候不順、野生動物に悩まされたりもしますが、みんな辛抱強く調査をしています。

長野県白馬村での調査風景

いかがでしょうか。昆虫の世界は私たちが思っているよりもはるかに深くて長い歴史があります。私たちの研究室では、その歴史の一端を紐解く楽しさを日々味わっています。興味が湧いてきたら研究室のHPを覗いてみてください。あとは実はラジオ番組もやっているので、もしよかったらこちらもどうぞ(インターネットでも聴けます)。

ミツバチ先生のUU昆虫記(FMうしくうれしく放送 第4火曜日 15:00~15:30 )

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筑波大学 生命地球科学研究群 環境学・環境科学学位プログラム

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