研究室にようこそ!

個性豊かな研究室を紹介します。

谷口研究室(発生生物学)

谷口 俊介 准教授 YAGUCHI Shunsuke

〜下田臨海実験センター 発生生物学研究室〜

たった一つの細胞である受精卵から三次元の体が形づくられ、それが動く不思議を明らかにしたい

下田臨海実験センター 

谷口 俊介 准教授

 (写真は下田臨海実験センターの前のビーチ)

研究紹介

我々の研究室では海産無脊椎動物の代表的なモデル生物であるウニの胚や幼生を用いて、以下のテーマで研究を行なっています。
1) 体軸形成の分子メカニズム
我々ヒトを含む多細胞動物の多くは、発生過程に各細胞が前後背腹左右といった3つの体軸の位置情報をそれぞれの運命決定に正確に反映させることで、この地球上の三次元空間で生活可能な体を作り上げています(図1)。しかし、位置情報というのは目に見えるものではなく、体全体の大きさや向きに対し、それぞれの細胞が相対的にどのくらいの位置にあるのか、どの方向を向いているのか、隣に何がいるのか/あるのかといったように、一見、あいまいに思える情報です。それらの情報の分子実体は何であるのか?それらの情報を細胞がどのように解釈して運命決定や分化に反映させているのか、その分子メカニズムを明らかにしています。

図1 多くの動物には前後背腹左右の3つの体軸があり、それに沿って各細胞が適切なタイミングで分化し機能する。

2) 神経形成の分子メカニズム
多細胞動物の動きを規定するものとして、神経は必須の存在です。それらの神経細胞が発生過程でどのような因子の働きのうえで形成されるのか、その分子メカニズムを明らかにしています。神経細胞は上記の体軸形成と切っても切れない関係で、神経細胞が体のどの位置にできるのかというのは体軸の形成に当然依存してくるので、体軸・神経両方を絡めて研究を進めています。

3) 神経細胞の機能
ウニ幼生の中で神経細胞がどのような働きをしているのかを明らかにしたいと考えています。特にセロトニン(図2)やアセチルコリンといった、我々ヒトの体の中でも重要な働きを持つ神経伝達物質の機能に着目して研究を行なっています。その結果から、進化の歴史の中で、この地球上に神経細胞が登場し神経伝達物質を駆使しながら機能してきた道筋を推測することができればと考えています。

なぜウニを利用するのか?

研究を進めるうえで、発案・思いつきからデータ取りの完了まで、ある程度自分一人でできる材料だからです。学生や研究員であっても教員に相談せずにこっそり実験して完了させることも当ラボでは可能です。こんな発想バカバカしいかなぁと思ったようなこともまずとりあえずやってみるということが気楽にできるのは、研究者の欲求を満たしてくれるものと信じています。しかし一方で、マウスやショウジョウバエといったモデル生物と違い、シュノーケリングをしての生体採集や飼育の工夫から始めなければいけない材料でもあります。ただ、自分の研究材料が、どのように自然の中で生活しているのかをイメージすることができるとポジティブに捉えてもらえればと思います。
ウニを研究材料とするうえで、心がけていることとしては、「ウニ学」におさまらないことです。結果的にウニでしか起こり得ない生命現象を解明することは全然構わないのですが、常にすべての動物で共通のなぞを解く!という心がけは忘れないで取り組んでいます。

図2 受精後4日目のウニ幼生を神経特異的抗体で染色したもの。緑がセロトニン神経で、マジェンタはすべての神経細胞を示す。

 

研究をしてみたい生徒・学生へのメッセージ

私は幼少の頃から生物に関わる仕事に就きたいとは思っていました。その延長で研究者というのも選択肢に入っていましたが、「何をやりたいか?」と聞かれると全然わからなくて、大学3年生の時に研究室配属を決める際にも全く決まっていませんでした。今臨海実験センターでウニを使って研究しているのも、ヒトも多細胞生物だから多細胞生物に関わってみようかな、なんでたった一つの細胞が割れて割れてを繰り返すだけでヒトみたいな体をつくることができるのだろうか?海のそばに住みたい等々の複合的な理由からです。今現在、漠然と研究者を目指している生徒・学生のみなさんも、ガチガチに目標を定めるのではなく、一歩下がって自分を見つめ直すと同時に生き物を自分の目で観察し続けて、“研究として”何を本当にやりたいのか、自分には何ができるのかをゆっくりと見つけていけば良いのではと思います。

 

研究室ウェブサイト


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谷口 俊介