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個性豊かな研究室を紹介します。

行動生態学研究室

庄子 晶子 准教授 SHOJI Akiko

〜行動生態学研究室&自然保護寄附講座〜

海鳥は広く深い海でどのような暮らしをしているのか?“目では追えない”海洋生物を“バイオロギングで観察”しよう!

 

庄子晶子 准教授

 

研究紹介

海鳥はほとんどの時間を海で過ごします。船から海を眺めると、目の前に広がる水平線と空がどこまでも続いていてその大きさを実感できます。この雄大な景色の中を、海鳥はどのように行動して無事に目的地までたどりつくのか?どのような方法で食べ物を探しあてるのか?私たちの研究室では、繁殖期に陸上で子育てする海鳥にデータロガーを取り付け、その行動を記録することで、海鳥の採餌戦略や渡り戦略を明らかにする研究を進めています。データロガーとは小型の記録計のことで、バイオロギング技術の急速な発展により、目的に合わせて多様なデータを取得できるようになりました。例えば、GPSロガーやジオロケーターから得られる位置データからは鳥類の通年にわたる移動パターンを知ることができ、深度計から得られる潜水データからは潜水性鳥類の採餌パターンを知ることができます。

図1 小型GPSロガーを装着したマンクスミズナギドリの飛翔軌跡を記録する

 

私たちが進めているプロジェクトを紹介します。

1)キャリーオーバー効果の検証

野外で繁殖するミツユビカモメを用いて、親から子への繁殖投資量を変化させることで、その後の渡り行動や繁殖成績にどのような影響を与えるのか(キャリーオーバー効果)を検証するため、アラスカ州ミドルトン島で操作実験を行う予定です。

図2 ミドルトン島へは小型セスナ機をチャーターして移動

 

2)海鳥を介した汚染物質輸送

移動性の高い海鳥は、餌を通じて体内に取り入れた栄養塩や汚染物質を遠く離れた別の場所に移動して排出することがあります。これを“海鳥を介した物質輸送”と呼びます。現在、北海道天売島とアラスカ州ミドルトン島で繁殖するウトウという海鳥を対象に、水銀の物質輸送のメカニズムと波及効果の解明に取り組んでいます。

図3 天売島ウトウ繁殖地内で生息する陸上植物を調べることで海から陸への汚染物質輸送を調べる

 

3)エトピリカの生態調査

海鳥の1種であるウミスズメ科のエトピリカは、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類に選定され、現在日本国内では数羽しか繁殖が確認されていません。本種の保護に役立てることを目的とし、基礎生態、特に渡り行動や越冬海域について、繁殖個体数の多いアラスカ州ミドルトン島で調査を行っています。

図4 エトピリカ成鳥

 

海鳥しか研究できないのか?

これまで海鳥を対象としてきましたが、研究は海鳥に限定していません。コウモリ類のナビゲーションや猛禽類の渡り行動、海棲哺乳類の混獲問題等、データロガーを装着して回収できる多くの動物を対象とした研究を行うことが可能です。

 

研究をしてみたい生徒・学生へのメッセージ

野生動物の行動や生態を知りたい、調べたい!という気持ちを一番大切にしています。ハシブトウミガラスはなぜ200メートルも潜水して餌をとるのか?ウミスズメはどうして卵から孵化後2日で巣立つのか?ハシボソミズナギドリはなぜ南極から北極へ渡るのか?陸上の生物では当たり前に知られていることも海の生き物ではよくわかっていないことがたくさんあります。広い海で暮らす彼らを長時間観察することや追跡することが難しいためです。今ある技術を上手に使って、目では追えない動物の謎を解明してみませんか?

図5 観察が難しい海洋生物ではバイオロギング技術が役立つツールとなる

 

自然保護寄附講座の履修生を募集しています!

筑波大学大学院世界遺産学学位プログラムおよび生命地球科学研究群は、大学院生を対象とした寄附講座(サーティフィケートプログラム)を2014年度から開講しています。この寄附講座では、自然と文化にまたがる学際的な知識と国際的な経験をもとに、自然保護に関する国際機関や国内機関、国際援助機関等で活躍する人材を育成することを目指しています。そのため、自然保護や地球環境、生物多様性の保全や世界遺産、それらに関連する行政や法律等、幅広く学べる講義が行われ、陸海域のフィールド実習や世界遺産演習等が用意されています。これらはいずれも日本語または英語によって実施されます。また、自然保護分野に関連する機関で実施する国内外のインターンシップや海外留学を支援する制度もあります

自然保護寄附講座では、私は「野生動物管理」に関わる講義や実習を担当しています。海鳥類やアザラシ類の生態調査を学ぶ野外実習や、英語でのディスカッションが主な内容です。他にも多くの講師による魅力的で多様な講義や実習を用意していますので、興味のある方はぜひ履修してください!

図6 オーストラリアのタスマニア島で世界遺産を訪れる海外実習を行った

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庄子晶子