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筑波大学育林学・自然保護学研究室

清野 達之 准教授 SEINO Tatsuyuki

~森の教育研究~

 

生命環境系 清野達之  准教授(山岳科学学位プログラムほか・生物資源学類 担当)

 

 

筑波大学には野外での教育研究活動拠点があるのをご存じでしょうか。今回はその中で、自分の教育研究の諸々と山岳科学センターの演習林部門を紹介したいと思います。

さて、文字だけみると演習林という響きが結構物々しい感じを与えているかもしれません。授業形式の「演習」を思い出してみると、その物々しさも薄れるでしょう。ここでは野外での実習や実験のフィールドとして、卒研や大学院生などの研究で活用されています。生物資源学類や学位プログラムでの実習では、現地の宿泊施設に泊まり込んで、どっぷりと森の生活を満喫してもらっています。動植物の生態観察や、実際に樹を伐り倒す林業的な実習と様々です。学生さん達のなかには、実習を機会に演習林での研究を始める方もいるようです。私は現地演習林に常駐していますが、たまに?授業などでつくばに出かけることがあります。そのため、なかなかのレアキャラですので、見かけると何か良いことがあるかもしれません。その逆だと言われないようにしたいものです。研究室は上條隆志教授たちと通称「育林研」を構成し、その一員として参画しています。学生さんたちとはたまに行くつくばと、現地での調査のときでしか直接会えませんが、インターネットの恩恵にあずかって、なんとかコミュニケーションを行なっています。

演習林に勤務していることもあり、これまでずっと森林を対象にした生態学の研究を行なっています。現在は主に筑波大の演習林の森林を対象に、森林の世代更新のメカニズム解明や、樹木の形態機能特性の面白さを紐解くことに喜びを感じています。筑波大の演習林は、長野県にある八ヶ岳演習林と静岡県にある井川演習林、そして本部の筑波実験林の三箇所です。私はこれまでこの三林総てに勤務してきました。筑波実験林を除いて、八ヶ岳演習林と井川演習林には場所や森林植生の違いだけではなく、その森林が今に至る背景や人間活動との関わりも異なっています。樹に刻まれた年輪から森林の過去の様子を解き明かし、樹木の幹成長を追跡測定することで、森林の将来を予測する礎となるような、過去と未来をつなげるような研究を模索しています。森林のうごきは人の目では気づかないようなスケールでゆっくりと進んでいます。森林の過去と未来を繋げていく作業は、やはり時間をかけたデータの積み重ねが大事です。忙しなく世の中は回っていますが、適当に焦りつつも腰を据えた観測の積み重ねからこのテーマに挑んでいます。機能は形態に現れます。枝や葉の形、樹皮の見た目など、これらに何の意味があるのかも探っています。例えば、樹の幹にはすべすべしたものやひび割れて厚いもの、ボロボロとしているものなど様々です。これらの形のメリットとデメリットを踏まえた生物学的な特徴を、生態学的な視点からみています。このような森林の動きと樹木の器官の形の生態学的な意味を、学生さんたちとも一緒に調べています。

 

写真その1:川上演習林のブナ林の試験地.年輪解析から,今から90年前に成立したと推察される.2008年から幹の成長と個体の生残の測定を続けている.

写真その2:井川演習林の最深部の森林と山の様子.頻発する斜面崩壊とそれから回復した森林植生,そして過去の人間活動の影響を反映した場所と,多様な森林の営みが伺える.

写真その3:多様な樹皮形態.樹皮だけながめても多様な森林の様子.

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