卒業生の声

社会で活躍されている卒業生・修了生の活動を紹介します。

No.44 岩瀬 哲 IWASE, Akira
国立研究開発法人 理化学研究所 環境資源科学研究センター 上級研究員



生物機能科学専攻
1995年 千葉県立東葛飾高等学校 卒業
2000年 筑波大学第二学群生物資源学類 卒業
2005年 筑波大学大学院生命環境科学研究科 生物機能科学専攻 単位取得退学

博士(農学)

2005-2009年 国立研究開発法人 産業技術総合研究所博士研究員
2009-2012年 国立研究開発法人 理化学研究所 基礎科学特別研究員
2012-2021年 国立研究開発法人 理化学研究所 研究員
2021年- 現職

研究業績等 https://researchmap.jp/docbenitake

 

筑波への憧れ

生物資源学類の門を叩いたのは、幼少期からの刺激の影響がかなり大きかったと思います。小学生の時に経験した様々な出来事、例えばつくば万博での体験などから、将来は植物に関する研究者になりたいと思っていました。植物のことを深く知るだけでなく、社会に役立てられるような研究をしたいと農学を志しました。母が障害児教育分野で筑波大の社会人修士号をとっていたり、姉二人がそれぞれ比較分化学類、日本語日本文化学類に通っていたこともあり、筑波大の雰囲気は進路を考える前からよく知っていました。緑が深く、広く伸び伸びとしたキャンパスや「研究学園都市」としてデザインされた街だというのにも憧れを持っていました。

農学の魅力

生物資源学類は他大学でいう農学部です。農学の魅力の一つは、そこに集う人の多様性が挙げられます。農学が扱う学問分野は非常に広く、生物の分子機能(ミクロ)から、環境・生態学(マクロ)までを扱う生物学の分野はもちろん、蔬菜、園芸、酪農、醸造、植物病理、土壌学などの農学分野、また、農業機械を扱う工学、農書を扱う歴史学、食糧生産とその流通などを扱う経済学なども内包しています。それぞれの分野を志す人たちが集うので、様々な観点、自分とは異なる情熱を持った人が沢山いました。同期の仲間達を一言でいうと「キャラが立っていて非常に熱く、面白い奴ら」でした。また、農学部の通例として、酒を頻繁に酌み交わす風習も代々受け継がれており、みんな近所に住んでいることを良いことに、いろいろなテーマで朝まで議論したりすることも多かったです。社会に出る前に多様な視点や人間に出会え、お互いを深く知ることができたことも、その後の人生の財産になりました。学類対抗のカレッジサッカーリーグでは生物資源の同期、先輩、後輩とチームを組んで3期連続優勝を果たした際の美酒の味は忘れることができません。

「学際性」と「教職課程」の魅力

研究者になりたいという夢を持っていたので、専門に関する講義はちゃんと受講しました。同時に、「学際的なプログラム」として他の学群学類の講義も受けられるという制度にも大きな魅力を感じていました。お隣の学類である生物学類の講義はもちろん、人間、比文、日日の東洋医学、現代思想、映画に関する講義、また芸術学群の絵画実習なども受講しました。学問をする場を提供するのが大学の役割です。筑波大は、文理、医、芸術や体育も一体となった、最も「総合大学」らしい大学としての魅力を持っており、専門性だけでなく、広い視野を培える場としては国内随一ではないでしょうか。さらに、教職課程を通して教育に関する数多くのことを学べたことも非常に良かったです。「教育心理学」などは、必修科目にすべき内容だと強く思ったのを今でも覚えています。遅かれ早かれ、多くの人が誰かの上司や親として教育的な立場になるからです。結果、資格として得た教員免許は、研究界というその後の不安定な進路の中でも心の支えになりました。研究界での経験は、理科教育に必ず活かせるからです。

「一人一テーマ」の魅力、プロ集団の刺激

卒業研究〜学位取得まで、田中秀夫先生(現筑波大名誉教授)の研究室で大変お世話になりました。「一人一テーマ」「面白いと思える独自の発想で研究する」という原則を大事にしている研究室で、バクテリア、菌類、藻類、昆虫、植物、動物まで、細胞に学び役立てる面白い研究をしていました。私は、研究者になるならば他の人とは違うテーマを自主的、自律的に進めたいと考えていたので、その研究哲学はとても肌に合いました。また、修士2年の時から運良く産業技術総合研究所・高木優博士の研究室に出入りできることになり、そこで研究者の先輩達から大変可愛がってもらい、多くの専門知識や技術、プロとしてやっていくために何が必要なのかを教えてもらいました。学生の時に身につけた哲学や技術を礎にして現在も研究を進めています。

後輩のみなさんへ

振り返ると、私は筑波大の良さを存分に吸収して成長したと思います。宿舎生活で深く繋がり合えた友人たちとの出会い。学際の名の下に、専門のみならず幅広い視野を持てたこと。東京高等師範学校から続く充実した教育学の講義と実習。そして近隣の研究所との関わりから、いち早くプロの世界を見られたこと。これから筑波大を目指す方も、現在在籍している方も、自分が置かれている場所から何をもぎ取るのか考えることが重要だと思います。私が書いた事以外にも多くの魅力を秘めた大学・学類・研究科です。是非とも、筑波大学にはどんな特色があるのかをよく知り、自分が欲しいものを貪欲に吸収し、自己を研磨していってください。「意志あるところに道は開ける」。皆さんの光溢れるご活躍を祈念いたします。

研究留学した際のパスツールの肖像画の前にて

(2023年10月)