卒業生の声

社会で活躍されている卒業生・修了生の活動を紹介します。

No.42 長手 彩夏 NAGATE,Ayaka
イラストレーター:
「羽毛恐竜完全ガイド」BIRDER編集部/文一総合出版、「恐竜学者は止まらない ! 読み解け、卵化石ミステリー 」(田中康平/著,長手彩夏/イラスト:創元社)


地球進化科学専攻

経歴

2014年 筑波大学 生命環境科学 地球学類
2018年 筑波大学 大学院 生命環境科学研究科 地球進化科学専攻
2020年 現職

現在の業務

IT関連の業務をいろいろと担当しています。これまでの業務では、ネットワーク管理、セキュリティ、システム導入等が主な仕事でした。最近では、デバイス管理システムの入替や、国内外へ会計系システムの導入を担当しています。
また、企業での仕事に加えて、個人イラストレーターとして仕事を請け負っています。元々恐竜が好きだったこともあり、古生物・地球科学系の書籍や雑誌、デジタル媒体向けのイラスト作製をしています。

昔から恐竜が好きだった

幼少期から、本を読むことと絵を書くことが好きでした。暇があれば本や図鑑を読んだり、落書きをしたり、時には友達とイラストを交換したりしていました。特に恐竜図鑑を読んでいる時が一番楽しくて、買ってもらった図鑑を開きながら昔の生き物がどんな生活をしていたか、想像しながら絵を描いていました。生き物と触れ合うことも好きで、親戚の住む淡路島に預けられていた時は、飼い牛を触ったり、虫を捕まえたり、勝手に山へ入ったり…度々怒られていました。

筑波大学を志望したきっかけ

所属高校が理系教育に力を入れており、全員が物理・化学・生物・地学の全ての科目を受けるカリキュラムだったことと、初年度で理系研究を学ぶクラスに所属していたこと、もともと生き物好きだったことから、自然と理系への興味や憧れが深まってきたように思います。
また、高校3年間の授業の中で、地学を学んでいる時が最もタイムスケールが大きく興味深かったのと、恐竜・古生物好きも相まって、大学でも地学が学べたら楽しいだろうな、という思いを持つようになりました。いわゆる地学の楽しいところは、地球上の現象を多様なアプローチで理解しようとする姿勢や、人間が一生で経験し得ない時間を経たものを解釈しようとするところだと今でも思います。
他にも、高校1年生のときに実習授業として三浦半島や長瀞へ巡検に行ったことや、高校入学の直前に東北地方太平洋沖地震が発生したことで、地質や地震についても興味を持つようになりました。
ただ、実際に進学先を選ぶ段階になってから、地学系の学科が少ないことに気づきました。国立大学に進学したかったので、実家のある関東圏で地球科学系の学科を持ち、研究連携先の多い筑波大を選択しました。一人暮らしがしたかったことも一つの大きな理由です。

つくばでの日々

学部所属時は、同期に古生物や岩石、旅など、様々なマニアがおり、多くの刺激を受けた学生生活でした。また、そんな個性的な同期達と一緒に、講義の一環で伊豆、四国、山陰、新潟、沖縄、タイなど、地質学的に有名な場所を訪れたことは大変貴重な経験でした。
研究室配属の際は、昔から持っていた恐竜・古生物への興味を貫いて古生物分野に進むか、後から興味を持った地震系分野に進んでみるか、迷いました。ただ、当時の所属教員との相性、同期のメンバー、個人の金銭的都合などを考えて、講義や巡検が面白く、将来役に立つかもしれないと思った(?)構造地質学へ進みました。思い返してみると大変不純な動機です。
修士の研究テーマは、熱で熔けた断層の微細構造を観察し、断層が活動した当時どのような現象が起こり、エネルギーが何に消費されたかについて調べる、というものでした。英語の参考文献を読んで自分なりに考えをまとめたり、解析ソフトや画像編集ソフトをどう研究に活用できそうかを調べたり、データの分析法を考えたり、他の方から発表資料のレビューを受けたりと、研究で実践したことは今の仕事でも役立っています。
研究に関係する分野はもちろん、直接関係しない分野の学会や外部講習、巡検へ参加するチャンスを数多くいただきました。修士2年では、国内外で発表の機会をいただきました。初めて英語でポスター発表を行った時は、考えていたことの3割ほどしか話せず、英語やプレゼンをもっと練習しておけばと今も後悔しています。ただ、筑波大学だけでなく、外部の研究者と広く交流できた経験は、今関わっている海外のプロジェクトに生かせていると感じます。
部活は、最初は馬術部に入部し、後に筑波大学新聞で挿絵や見出しを作る役目をしていました。また、学類行事にも関わり、先生方や先輩方との交流や、つくばの小学生と学習イベントなども行っていました。この頃も、イラスト作りを細々と続けていましたが、描いていて楽しく、好評だったのは、恐竜でした。
修士の終盤、筑波大学新聞352号に載っていた恐竜のイラストを見た田中康平助教から、担当する書籍に載せる恐竜のイラストと、日本で見つかった卵化石、ヒメウーリサスのプレスリリースに使うイラストを描いてほしいと声をかけられました。内心とても驚きましたが、羽毛恐竜は特に好きだし、二度とない機会だと思い、担当させていただくことにしました。その時すでに内定先は決まっていましたが、なんとか両立できると(根拠もなく)決意しました。
幸か不幸か、コロナウィルス感染防止策として、就職先で在宅勤務が認められたおかげで、作業時間を捻出することができました。それでも制作は大変でしたが、原稿が面白かったのと、恐竜愛に支えられて、無事に出版されました。おかげさまで重版もかかり、心からやってよかったと思っています。

出典:「恐竜学者は止まらない! 読み解け、卵化石ミステリー』(田中康平/著,長手彩夏/イラスト: 創元社)

近況

現在は部署異動があり、別分野の経験を広げつつも、イラスト作成の依頼をいただいて雑誌や書籍に掲載するイラストを担当しています。最近はインターネット経由で依頼をいただいたり、打ち合わせをすることも多く、大変便利だなと感じます。絵を描くのはもちろん楽しいのですが、そんな便利さを支えるITで社員を支える役割にもやりがいを感じています。
今後は、恐竜はもちろん、地学系のバックグラウンドを持つ人間として、地学の面白さをイラストという手段で伝えることがもしできたらとても嬉しいなと思っています。

画像提供:「羽毛恐竜完全ガイド」BIRDER編集部/文一総合出版

 

 

(2023年7月)