卒業生の声

社会で活躍されている卒業生・修了生の活動を紹介します。

No.38 永井 輝一 NAGAI Kiichi
水戸ヤクルト販売株式会社
免疫宅配部 宅配推進課


生命環境学群生物学類

経歴

2017 筑波大学生命環境学群生物学類 卒業
2017 水戸ヤクルト株式会社 入社

 

はじめに

私は大学を離れて6年が経とうとしていますが、今の私がこのように生きているとは学生時代は想像もしていませんでした。私は専門分野で活躍しているわけでもなく、学生時代に優秀な成績を修めたわけでもありません。その一方で、私のようにキャリア形成に悩んでいる方々の役に立ちたいという思いもあったため、筆を執らせていただきました。

学生時代について

私は先述の通り、明確に何かを成し遂げたと言えることがなく色々なことが中途半端になってしまいましたが、見方を変えれば何にでも挑戦する機会があった4年間だったと感じています。中学卒業後辞めてしまった卓球を再開したり、勉強してきたことを生かすために塾講師のアルバイトをしたり、学業以外にも様々な楽しみ方ができたと思います。サークル活動を通じて学外にもたくさん知り合いができるなど、趣味も充実していました。

私は元々あまり進学を考えていなかったため、4年で学生生活を終えて就職を目指すことにしていました。現在は退職されていますが、松本宏先生の講義で植物機能制御学研究室に興味を持ち、4年次には大変お世話になりました。1つ1つの実験を確実にこなすことや分野特有の英語表現に慣れることなど、研究の世界は難しいことばかりでした。現在は勉強した内容を生かす仕事をしているわけではありませんが、一般企業においてはこのような経験をしたことのある人材というだけで価値があるのではないかと自負しています。

現在の職業について

学群卒業とともに就職するつもりではありましたが、具体的な希望業種は曖昧なまま就職活動をしていました。そこで、茨城県内で働いて欲しいという両親の強い要望と折り合いをつけながら水戸ヤクルト販売株式会社に就職しました。専門知識を生かすことは諦めることになりましたが、地元で信用がある企業で安定して働くことを重要視し、職種に拘らないことを決断しました。現在は総合職として、営業から事務的な業務まで幅広く担当しています。学生時代には想像もしていなかったような働き方をしている自分に大変驚いています。

社会に出てからの苦悩

入社してまもなく配属になった部署では営業がメイン業務でした。元々営業には自信が無かったので、何でも挑戦しながら少しずつ身につけていくしかないという覚悟で臨みましたが、すぐに大きな壁にぶつかってしまいました。なぜなら、アカデミックの世界と営業の世界を比べると話し方の定石があまりにも違っていたからです。大学では事実とそこから解釈できることを誇張なく正確に話すことを大事にしていましたが、そのような話し方でお客様の心を掴むことは難しく、思う様に売上に繋がりませんでした。丁寧に伝えたはずの言葉が正しく解釈されず、トラブルの原因になりかけたこともありました。職種に限らず、社会に出ると自分の価値観が大きく揺るがされる出来事に直面する機会がどんな人にもきっとあるはずです。その心構えをしておくだけでも少し気楽に働くことができるようになるということを、これから就職する方に伝えておきたいと思います。

学問の経験を武器に

私は大学生活を通してデータを読み解く能力が培われたことが大きな財産だと思っています。企業のあらゆる実績には必ずバックグラウンドが存在していますが、データを見てそれを推測できるのは会社の実態を把握するのに大きな助けとなりました。しかし、会社にはそのようなデータが蓄積されているにも拘わらず実際の業務には生かされていないことが多くありました。データを活用すればルーチン化できるはずの作業を毎月繰り返し、そのチェックにたくさんの時間を使ってしまっている状況を何とかしたいと思いました。そこで、それまではグラフを作るためにしか使っていなかったExcelを勉強し、マクロによる自動化までできるようになりました。実は、当時の学類の講義でプログラミングの勉強をした時は、自分にはとても難しくてできそうにもないと諦めてしまっていました。しかし、業務に役立てようという目的意識が芽生えてから勉強したことで自分でも驚くほど速く習得できました。今でも完全に習得したという自信はありませんが、間違いなく業務効率化に役立てることができたと思っています。大学時代は持っていなかったスキルを新たに身につけて仕事の質を向上させられた経験が私にとっての自信になりました。

学生の方へ

筑波大学は多方面において非凡な人がいるため、自分の能力が低いように思えて悩んでしまう人も多くいると思います。私は社会に出て6年近く経っても日々そのようなことに悩んでいます。私にはそのようなコンプレックスがありますがそれと同時に、遠い未来に人生を振り返った時に満足できるものであればどのような歩みをしてもいいとも考えています。学生の皆様はこれからの人生がまだ真っ白な人がほとんどかと思いますが、一生をかけて大事にしたいものが1つでもあれば、自然と人生に活気が生まれてくると私は信じています。一般的にはそれをパートナーに求める人が多いかと思いますが、研究や仕事や趣味に全てを注ぎ込むのも良い人生です。私は、何かに熱中している時間が最も工夫を生んで最も成果を出せて最も幸せな時間だと思っています。そしてそれを実現するために、きっと学生時代の人の縁は役に立ってくれると思います。ぜひ大学でたくさんの人の考えや価値観に触れて、自分の世界を広げていってください。

 

(2022年12月)