卒業生の声

社会で活躍されている卒業生・修了生の活動を紹介します。

No.35 小川 万尋 OGAWA Mahiro
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター
株式会社 天地人


環境科学専攻  

経歴

2013年 筑波大学生命環境学群地球学類 入学
2015年 University Putra Malaysia 留学
2019年 筑波大学大学院生命環境科学研究科環境学専攻 修了
2019年 

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構                  第一宇宙技術部門衛星利用運用センター  現職 

2020年 株式会社 天地人   現職

 

「地球学を学んだ者として、その知識や経験を社会に還元できれば幸せだと思います。」と入試の面接で答えてから9年が経ちました。その一歩を踏み出したばかりですが、筑波大学だからこそ得られた経験とつながりの一部をお伝えすることで、何かのきっかけになれば幸いです。

地球学類の魅力と波乱万丈なマレーシア留学

小学生からガールスカウトに所属しており、野外活動などを通じて自然を身近に感じていました。一方、自然は時に脅威にもなります。そこで、地球システムを学びたい!と思い、筑波大学の地球学類を受験しました。地球システムを多角的に学べる環境がある、フィールドワークが充実している、留学が可能であるという私にとって最高の学び舎でした。

全国津々浦々から集ったクラスメイトと地球環境学、地球進化学などを学び、伊豆大島や新島、新潟、長野、山梨、茨城などへフィールドワークに行きました。中でもフィールドにて、実際の現象がどういうプロセスで起きているかを解き明かすために議論した時間はかけがえのないものでした。

また、学部2年生の冬から半年間マレーシアに交換留学へ行き、多様な価値観の中で柔軟に対応する力がつき、新しいことに飛び込む重要性を改めて実感しました。一方で、文化の違い(時間の流れ方、郵便の精度など)なのか、留学前の調整が一番苦労しました。渡航日になっても留学ビザに必要な書類が届かず、観光ビザでの出国となり、クアラルンプールに到着しても強制送還の可能性ありの同意書にサインしました。不安な夜を過ごしましたが、機内から見えた流れ星が願いを叶えてくれたのか無事入国できました(その後、無事留学ビザは発行されました)。今では笑い話となりよい思い出です。先生方には単位互換や日本での授業のフォローなどもして頂いたおかげで、留学先で学びたいことに全力を注ぐことができ感謝しております。

帰国後、もっと外に日本を発信したいと思い、KAKEHASHIプロジェクトに参加しました(筑波大学含め12の大学が採択)。アメリカで現地学生との交流や日本の強みや魅力をプレゼンするプロジェクトです。交流を通して、相手の考え方や価値観を知り、寄り添う大切さを改めて学ぶことができました。現在でも留学やプロジェクトで親しくなった人達と交流を続けています。

水の履歴を辿る旅

留学中のシャワーが出ない、蛇口の水は飲めない、ジャングルに流れている川の源流を探しに行く経験などもあり、持続可能な水資源に繋がる研究がしたいと、水の循環を科学する水文科学を専攻しました。学部4年生から修士まで地下水をターゲットに、雨が降って湧水として出てくるまで何年かかるか、山にどれだけ水があるかを日本8か所(九州と四国を除く6地方)でサンプリングし、比較を行う研究をしていました。中でも中国で分野横断型の研究発表や交流を行い、日本以外の方々と地下水について議論でき、貴重な経験ができました。指導教官である辻村真貴教授のもとで、研究活動はもちろん、社会に出てからのことも含め数多くのことを学ばせて頂きました。

研究室以外では、約半分が留学生という環境科学専攻の授業の一部を英語で受講し、新設されたグローバルヴィレッジという留学生と日本人のシェアハウスタイプの学生寮で、2年間楽しく暮らしていました。

 

宇宙への第一歩

どこに就職するか悩みましたが、縁あってJAXAで働いています。新しいことに挑戦し続けながら社会へ還元していきたい、持続可能な未来に繋げていきたい、そして何よりワクワクしたからです。現在は、衛星データを用いて日本の火山などに対して防災・減災に繋げられるよう日々従事しています。具体的には、本島から遠く離れた海域火山、陸域火山の火口などの情報は重要ですが、アクセスしづらいなどの要因で情報が得られにくいです。衛星データを活用し、火山活動の状況をユーザーに分かりやすく伝えることで、衛星の利用促進に努めています。ユーザーとの議論の中で、衛星データの情報が役に立ったと言っていただけると大変嬉しいです。今後も衛星データをより活用してもらえるよう、ユーザーの立場にたったデータ提供や活用方法の提案などを行っていきたいです。

将来、宇宙飛行士だけではなく、誰もが宇宙に行ける時代が来ると思います。その際に必要不可欠な水や、人と人とを繋げられる食に関わりたいと思い、SPACE FOODSPHEREのプログラムに業務として携わっています。宇宙から人と食と地球の未来を創っていけるよう進めています。

また、水文科学や衛星・地上データを組み合わせて持続可能な環境に繋げたい、ビジネス面での衛星の利用方法を学びたいと思い、株式会社天地人でも働いています。宇宙ビッグデータを使い、人類の文明活動を最適化するというミッションのもと、農業やインフラ、エネルギー、流通、旅行など幅広い分野のソリューション開発をしている会社です。直近では衛星データからピンポイントの日射量を推定することで、収量予測などの土地の価値を明らかにする。実際に野菜を栽培し、衛星データを用いて収量などを検証することで、その土地に合った品種と栽培方法の普及に繋げていこうとしています。

学生の皆様へ

新しいことに挑戦し続けた経験やつながり、支えてくれた人たちが私の今を創ってくれています。筑波大学には多種多様な仲間と、やりたいことに挑戦できる環境があります。大学時代の経験やつながりは、将来の選択の幅を広げ、人生を豊かにしてくれるはずです。自分の思いを行動に移すこと、選んだ道で後悔のないよう楽しむことは自分自身でしかできないことだと思います。

“今しかできないことに全力を尽くしてください!”

(2021年4月)