卒業生の声

社会で活躍されている卒業生・修了生の活動を紹介します。

No.27 瑞慶村 知佳 ZUKEMURA Chika
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
(農研機構)
本部人事部 兼 農村工学研究部門 研究員

生物資源学類

経歴

2009 筑波大学第二学群生物資源学類(環境工学コース)卒業
現在 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)本部人事部 兼 農村工学研究部門 研究員

はじめまして。私は2009年度に生物資源学類を卒業し、現在は農業工学分野の研究者・技術者として働いて10年目を迎えます。筑波大学に入学した頃は、農業工学という分野さえ知りませんでした。思い返すと、学生時代の多くの出会いによって今の自分があるとつくづく思います。以下、「現在の仕事」「学生時代の思い出(学業面)」をご紹介します。この記事を読んで「こんな人もいるんだな」と、学生の皆さんが将来のキャリアを考える際の参考になれば幸いです。

*農業工学に興味を持った方や就職活動の過程をご覧になりたい方はこちらもご参考ください:「フィールドワークは面白い」、瑞慶村知佳、農業農村工学会誌85 (5)、439~442 (2017)

現在の仕事

所属する農研機構は、食料・農業・農村に関する研究開発を行う機関です。主に担当しているテーマが「田んぼで畑作物を栽培するときの水はけの良し悪しを評価する手法」です。分野で言うと、「農業工学/土壌物理」になります。現在担当しているプロジェクトの対象作物が田んぼで栽培されている大豆なので、最近は4~5月は調査の準備をして、6~7月の大豆の播種時期に合わせ現地調査を開始し、土壌水分計など定期観測用の機器類を設置します。8~11月は機器類のデータ回収やメンテナンスを行い、まとまった降雨後には現地の様子を見に行きます。主にこの頃に学会にも参加します。11~12月の大豆の収穫時期に現地調査を終え、報告書をまとめ、12~1月のプロジェクトや内部での会議向けの報告書を作り、2~3月にデータ整理を集中的に実施する、というような1年を過ごしています。基本、作業着です。自然の中で過ごすのが好きなので、田んぼを歩き回れるのは楽しいです。ただ、2019年度からは人事部と併任となり、職員の人材育成に関わる業務(主に研修の企画・調整など)がメインの業務となりました。最近は田んぼに行く機会は滅多になく、随分生活リズムが変わりました。農研機構は大きな組織なので、様々な分野の研究者や研究をサポートしてくれる多くの職員が在籍しています。これまでの研究業務だけでは絶対に出会わなかった方と人事部では一緒に仕事ができるので、かなり視野が広がりました。これまで自分の研究のことしか考えていなかった頃は、研究の方向性さえ組織やプロジェクトの考えに沿っていれば、細かいことは自分の考えを反映できている感覚があったのですが、人事部で仕事するようになってから、自分の裁量でできることが限られ、今更ながら大きな組織に属していると実感しています。社会人10年目を迎え、今後どのようにキャリアを積んでいくか、色々と悩みは尽きませんが、目の前の業務に取り組みながら、家では2人の子供たちの子育てをしながら、今後の自分のキャリアを模索している最中です。

学生時代の思い出(学業面)

資源(生物資源学類)は3年次から専攻を選択するため、1~2年生の時は共通科目を受講しながらどの専攻へ進むか考えます。私は「環境工学コース」を選択しましたが、そのきっかけとなったのは、2年生の夏休みに資源の短期海外農業研修に参加したことでした。研修は1週間ほどタイへ行き、カセサート大学(タイの農業関係の名門大学)の学生との交流や現地見学、JICAバンコク事務所を訪問しました。JICAを訪問した際に、衛星画像を使った農業気象の話をして下さり、そこで衛星リモートセンシングに興味を持ちました。帰国してから、衛星リモセン関係の講義を探しましたが、すぐに受けられそうなものが見つからず、安易に「転学(他学類への移籍)」を考え、担任の先生に相談しました。すると、「資源でもリモセンをやっている先生はいるから、まずはそこに話を聞きに行ってみたら」と教えてくれました。それが、卒論でお世話になることになる流域管理研究室の奈佐原顕郎先生でした。流域管理研究室で卒論に取り組むには環境工学コースを選択する必要があり、当コースへ進むことを決めました。

流域管理研究室はとても良い雰囲気で、奈佐原先生はもちろんのこと、他の先生方や先輩方からも熱心に指導いただき、充実した卒論活動を送りました。衛星リモセンのキレイな画像に惹かれた私でしたが、奈佐原先生からは現地データの重要性を徹底的に指導いただきました。衛星画像で見た目のキレイな画像は簡単に作れるけど、それが何を意味するかは現地データ(実証データ)があってはじめて価値があると。卒論は田んぼを対象にし、現地観測するために、毎週つくば市内の田んぼへ通うことになりました。まさか毎週田んぼへ通うことになるとは当初は想像していませんでしたが、研究室の先輩が現地調査の楽しさを教えてくれ、すぐにのめり込みました。

また、奈佐原先生は「リモセン虎の穴」という、つくば界隈の衛星リモセン関係の研究者が集まる勉強会を主催しています。つくばには様々な研究機関があり、リモセン虎の穴には様々な分野の色んな研究所の研究者が集まっていました。まさに、つくばならではの環境です。分野は、気象、環境、農業、防災、森林、植物など様々でした。衛星リモセン技術を使うといっても、こんなにも様々なアプローチがあるのかと毎週驚き、これが大変刺激的でした。毎週の皆さんの活発な議論から、研究の面白さを教えてもらいました。

最後に

筑波大学はすべての学群・学類が同じところにあり、1箇所に様々なプロフェッショナルが集まっています。また、さらに様々な研究機関が周囲に位置し、筑波山や霞ケ浦などの自然に囲まれており、非常に豊かな環境だと思います。

在学中、私はトライアスロンクラブに属し、一日中ジャージで過ごし、講義の合間に泳ぐ・自転車に乗る・走る生活を送っていました。また、他学群・学類の講義も受けられるので、芸専(芸術専門学群)の油絵の実習クラスも受けに行きました。同じ石膏像の周りに20~30人がぐるりと囲み、それぞれのアングルからモノトーンで石膏像を描くという内容でした。すごく楽しくて、いまだに当時の様子を鮮明に思い出します。

筑波大学は、自分がやりたいと思ったことに何でもチャレンジできる場所だと思います。ぜひ筑波大学でのキャンパスライフを自分らしく楽しんで下さい。

(2020年1月)