卒業生の声

社会で活躍されている卒業生・修了生の活動を紹介します。

No.20 尾嶋 好美 OJIMA Yoshimi
筑波大学GFESTコーディネータ



生命環境科学研究科

経歴

北海道大学農学部畜産学科卒業同大学院 修了
筑波大学生命環境科学研究科博士後期課程単位取得退学
博士(学術)
現在 筑波大学GFESTコーディネータ

著書

・『ロウソクの科学』が教えてくること」尾嶋好美編訳 白川英樹監修

・『食べられる』科学実験セレクション」「家族で楽しむおもしろ科学実験」 等

筑波大学で働き始める

2009年に筑波大学で、「国際生物学オリンピックつくば大会(IBO2009)」が開催されました。国際生物学オリンピックは世界中から、生物学が大好きな高校生が集まって、生物学の知識やスキルを競うとともに、「生物学大好き」な仲間たちと交流を深める場です。各国それぞれ4名までしか参加が認められないため、この場に集まることができる高校生は、本当に生物学が好きで、非常に優秀な生徒になります。

知り合いから国際生物学オリンピックのことを聞いていた私は、「どんな子たちが実際には集まってくるのだろう?大会に関わりたい!」と思い、筑波大学生物学類内にあったIBO2009事務局で2008年から働き始めました。

ちょうどそのころ、筑波大学は「BSリーグ(Biological Science League)~めざそう未来の生物学者!~」として、小中学生を対象にした科学教育プログラムをスタートしました。私はBSリーグの運営を担当しつつ、IBO2009の準備にも関わりました。

トップ層の教育について

そもそも私がトップ層の教育に興味を持ったのは、アメリカの日本語補習校でのある経験からでした。夫の留学に伴い住んでいたフィラデルフィアでは、現地にいる日本人子弟を対象にした日本語補習校がありました。土曜日だけですが、日本の教科書を使って日本語で勉強をする学校です。私はアルバイト講師として6年生の担当をしていたのですが、普段あまり目立たず、話しかけても来なかった生徒が、「先生、僕、マスリーグの学校代表に選ばれたんだよ!」と嬉しそうに私に言ったのです。「マスリーグ??それって何?」「算数ができる子が学校から選ばれて、地区の大会に出るんだよ」彼の誇らしげな表情を見たとき、「スポーツだけでなく自分の得意なことで、輝ける場があるっていいな」と思いました。

社会人入学

BSリーグには日本各地から、生物学が大好きな生徒たちが集まりました。受講生の中には国内の科学コンテスト等で入賞する生徒たちも出てきました。数百人の受講生を見守る中で、「トップ層の教育にも、日本にあったやり方があるのではないか?」と考えるようになりました。「自分の考えを、きちんとまとめたい」という想いから、息子の小学校入学と同時に私自身も筑波大学生命環境科学研究科生命産業科学専攻に社会人入学しました。2011年4月、東日本大震災の影響で大学会館が使用できず、陸上競技場で行われた入学式で、クリス・ハートさんが「IMAGINE THE FUTURE.」を歌ってくださったのを覚えています。

当たり前だと言われそうですが、博士をとるのは大変でした。仕事の内容がそのまま研究内容ですし、本を書いているので文章を書くことには慣れています。そのため「博士論文を書くことはそんな大変ではないのでは?」と思ったのですが、かなり苦労しました。「もう取らなくてもいいや」と匙を投げかけたことも何度もありましたが、先生方に励ましていただき、最終的に形にできたことに感謝しております。

科学教育への思い

2014年度からは、筑波大学GFESTコーディネータとして、プログラムの企画・運営を担当しています。GFESTはすでに科学技術分野で何らかの実績を持つ生徒を対象にしており、全国各地から科学技術に非常に関心の高い中高生が参加しています。

生物学オリンピックやGFESTに集まる生徒たちからよく聞かれるのは「初めて同じレベルで、同じ熱さで科学について語り合える仲間を見つけられた」という言葉です。実習中に、ホワイトボードに数式を書いて物理について話し合う生徒たちや、夜遅くまでそれぞれの研究についてアドバイスしあう生徒たちを見るたびに、それぞれが尊重しあい、仲間となっていく場の必要性を強く感じます。

「研究をしていると話すと、周りからヘンなヤツ扱いされる」という言葉も聞きます。孤独感や周りの無理解により、自分のやりたいことができなくなるのは、本当にもったいないと思います。私はこれからも、科学が好きな生徒が思う存分科学を楽しみ、自分の進みたい道に進んでいくためのサポートをしていきたいと考えています。

GFESTでは毎年、ノーベル化学賞受賞者である白川英樹筑波大学名誉教授による化学実習を行っています。そのご縁で、一緒に本を出しました。

これまで6名の受講生が世界最大の高校生のための国際科学技術フェア(ISEF)に日本代表として参加しています。