
- No.15 河島 友和 (KAWASHIMA Tomokazu)
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Assistant Professor,
Department of Plant and Soil Sciences, University of Kentucky
生物学類
経歴
1997年〜2002年 | 筑波大学第二学群生物学類 |
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2002年〜2009年 | University of California, Los Angeles, Dept. of Molecular, Cell, and Developmental Biology (PhD) |
2010年〜2014年 | Temasek Lifesciences Laboratory, Singapore (Research Fellow) |
2014年〜2016年 | Gregor Mendel Institute, Austria (Senior Post-doc) |
2016年〜 | 現職 |
2002年の筑波大学卒業後すぐに海外生活をスタートさせ、カリフォルニアからシンガポール、オーストリア、そして現在のケンタッキーと全く想像していなかった研究生活を送っています。なんだか遠回りのような感じもしますが、研究者だからこそ国境の垣根なく仕事を見つけられ、違う国で生活できるということが私の研究にもプラスに働いていると実感しています。しかし今の私があるのは、筑波大学でのいろいろな先生方が「つくばから海外」という人生の中の大きな一歩を支えてくださっていたという事実があります。私の経験が参考になるかわかりませんが、みなさんもいろいろな出会い、そして自身の置かれた環境をチャンスに変えていってください。
筑波大学生物学類生時代に1年休学してオーストラリアに留学していたことから、海外への抵抗はなく、4年生春の時点では海外も含めて大学院探しをしていました。しかし、揃えなければならない書類が次々と発覚し、夏に入る前には気持ちが完全に萎えていました。そんな時、気にかけていただいていた井上勲先生との立ち話で、「海外を考えていましたが、国内に絞るつもりです」と伝えたところ、「もう少し骨のある奴と思っていたが(意訳)」との返しが。悔しさはありましたが、だからと言って海外留学に挑戦してやろうとまでは考えませんでした。そんな折、遺伝子実験センター内で江面浩先生に軽い気持ちで「海外の大学院も考えています」と話したところ、「河島君ならやれるよ!(意訳)」との即答が!井上先生の発破から燻っていた気持ちに整理がつき、すぐに卒業研究の担当教官をしていただいた鎌田博先生に海外行きの気持ちを伝えたのを今でも鮮明に覚えています。鎌田先生は「私は海外留学経験がない、経験豊富な渡邉和男先生に聞いてみては」とおっしゃってくださり、渡邉先生の助言をいただきながら最終的にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)への大学院留学が決まりました。井上先生と江面先生にエンジンをかけていただかなければ、鎌田先生と渡邉先生の全面的なサポートがなければ今の私はありません。一人でも欠けていればもしかしたら現在の自分がなかったと思うと、学生時代本当に良い先生方に囲まれていたと改めて実感します。
筑波大学時代の授業でいまだに覚えていることの一つに、白岩善博先生の担当された実験授業があります。何名かのグループに分かれて生理学実験をするものだったのですが、実験結果が気に入らずもう一度やり直したいと訴えたところ、私たちの気の済むまで実験をさせてくださいました。実験にとことんまでつき合ってくれる友人、そして最後まで見守ってくださるTAや先生方が存在する贅沢な大学生時代を過ごすことができました。生物学類には他大学の生物学科と比べ非常に多くの先生が在籍しています。せっかくのこの素晴らしい環境、出会いを生かしきってください!
さて、前述しました通り、大学院卒業後、ポスドクとしてシンガポール、オーストリアをまわり、現在アメリカ、ケンタッキー大学で1名のテクニシャン、3名の大学院生、3名の大学生と共に日々実験をこなしています(https://kawashimalab.ca.uky.edu)。メインテーマとして、種子形成において細胞骨格の一つであるアクチン繊維がどのように制御され、生殖に関わっているかをライブイメージングを用いて観察しています。また、crop ecophysiologyを専門とする同僚と大豆を用いて環境・遺伝子・種子形成・収量を繋ぐモデルの構築をテーマとした新たな共同研究もスタートさせました。基礎となる研究環境を整えた上で、種子形成の分子、細胞, 発生学だけでなく、農業・環境等と結びついた新たな視点から研究ができたらと私自身も少々興奮気味に活動しています。興味のある方はぜひご一報ください。
ラボを立ち上げたばかりではありますが、つくばから始まり現在ケンタッキーと、思ってもいなかったところにたどり着き研究してきました。それぞれの場に一長一短があり、経験から学んだことの一つは「現状からいかに最大限のものを引き出すか」です。これは機材や施設もそうですが現状を変えるのは簡単ではありません。また、考え方の異なる人たちの中で違いを否定するのではなく、良いところを引き出し、相乗効果を得られればと常に自分に言い聞かせています。モットーは「Be positive!」です。もちろん「言うは易し、行うは難し」です。日々精進です…。