生命環境科学研究科
概要・専攻説明

生命環境科学研究科 概要

生命環境科学研究科は、地球科学、生物科学、生物資源科学の基礎分野と、学際的な環境科学の4つ研究分野からなります。本研究科には博士前期課程4専攻、博士後期課程8専攻、および3年制博士課程1専攻と5年一貫制博士課程1専攻があります。本研究科の目的は、生命科学と環境科学に関する深い知識と研究能力を持ち、かつ、生命や人間を取り巻く地球環境、自然環境、社会環境を幅広い視点でとらえそこで発掘された研究課題に対して問題解決能力を持つ研究者、大学職員、高度専門職業人を養成することです。

専攻説明

【5年一貫性】

環境バイオマス共生学専攻

人類の持続的発展のためには、環境保全と経済発展の好循環が必要不可欠です。
また、その実現化に向けては、カーボンニュートラルで再生可能なエネルギー資源および生命維持と生物生産に不可欠な水資源の確保が最重要課題となっています。
世界的に、前者に関しては藻類が未来の石油代替資源として注目され、後者に関しては水循環の調節機能をもつ森林や湿地などの土地被覆の管理および水質保全が注目されています。
今後は,双方の項目を同時並行的かつ調和的に取り組むことによって、地域や地球の持続的発展につながることが期待されています。

このため本専攻では、環境バイオマス基礎科目の習得、科学的リテラシーの付与、文化・社会・俯瞰的視野の醸成や関連プロジェクト・事業への参加や海外教育研究経験などによる現場実践力のアップ、グローバル感覚の涵養などにより、研究者(教育者を含む)、高度専門職業人としての基礎を付与するとともに、水と藻類を中心としたグリーンバイオマスに関しては世界をリードする最先端な研究を推進することができる人材を養成する教育を行います。

【区分制後期】

地球環境科学専攻

地球環境科学専攻では、地球環境の実態とその自然科学的プロセスやメカニズムを時間的・空間的に研究し、かつ人間環境を含めて総合的に解明しようとする教育と研究を行っています。この目的を達成するために、6つに分野と連携大学院方式による2つの分野が組織されています。

地球進化科学専攻

地球が誕生してから現在まで、46億年という膨大な時間が流れ、その間、地球自身、そして地球に生息する生物も進化発展してきました。地球進化科学では、地球の深部から地表までの歴史や仕組みを調べ、また、それらの知識をもとに未来を予測することを目指しています。地球の形成や変動、地球と共に進化してきた生物、また地球と生物がおりなす、さまざまな現象を解明するために、鉱物結晶の分子・原子レベルのミクロな現象から、地球規模そして太陽系規模のマクロな現象を研究しています。

地球進化科学専攻は、生物の適応進化様式と地球表層生命環境の変遷を追及する「生物圏変遷科学」、地球表層部の環境変遷について地層などを通じて解明する「地圏変遷科学」、固体地球の変動の物理的・機械的諸過程を解明する「地球変動科学」、地殻とマントルの相互作用、岩石形成プロセスを研究する「岩石学」、地球・惑星システム進化の観点から物質の濃集・分散や資源の形成を研究する「惑星資源科学」、鉱物の特性記載と生成機構を解明する「鉱物学」、哺乳類古生物学・頭足類古生物学・ジルコン等放射性年代に基づき地球史の解析を行う「地球史解析科学(連携大学院)の計7分野によって構成されています。

生物科学専攻

生物科学専攻は、多様性生物科学、細胞生物科学、分子生物科学の3領域において、世界をリードする先進的かつ独創性の高い研究を推進できる研究能力とその基盤となる豊かな学識を持つ研究者および高度職業人の養成を目的としています。専攻を構成する3領域はそれぞれ独立したものではなく、相互に補完し合いながら研究・教育を推進する体制となっています。また本専攻では、筑波研究学園都市や東京都内の研究水準の高い研究機関(産業技術総合研究所、理化学研究所、農業生物資源研究所、東京都医学総合研究所、国立感染症研究所など)と連携大学院方式による協力関係を結んで広範な教育研究活動を行っています。3領域それぞれにこれら研究機関に所属する研究者が客員教員として担当する分野があり、学生を受け入れています。

学生指導の基本方針

国際的な競争を意識した最高水準の教育研究を実践する方針で学生指導にあたっています。その実現のために、魅力ある研究分野の創設、優れた教員の配置、国際性豊かな博士を育成するための教育カリキュラム、複数指導教員制などにより教育体制の充実を図っています。また、優れた研究成果をあげた者は、いわゆる飛び級制度により3年未満で学位取得が可能となります。専攻ではこの制度の積極的活用にも取り組んでいます。

国際地縁技術開発科学専攻

「エコリージョン」とは環境調和的な活動空間です。国際地縁技術開発科学専攻は、21世紀の社会が目指すべき持続的で安全な社会を、生態循環系、資源循環系、経済循環系が整合調和するエコリージョンの創生・維持によって実現させることを目指しています。その鍵となるのは、(1)地縁技術に新しい環境調和技術を融合した「適正技術」(Appropriate Technology)の開発、(2)適正技術を受け入れるエコリージョン基盤の開発と保全、(3)そして適正技術を受容し、動かす経済社会システムの開発です。この観点から、3つの研究領域を置き、その有機的な連携によって国内、海外の持続的地域発展への方法体系と適正技術の開発・定着に挑戦しています。

特徴は、新しい発想による適正技術の開発と定着に挑戦していることであり、これまでの開発学手法に類例のない固有の地域開発学体系の構築を目指したフィールド・サイエンスです。また、3つの領域とは、エコリージョン基盤開発学領域(9つの研究分野)、食料・バイオマス科学領域(7つの研究分野)、地域システム経済学領域(6つの研究分野)」であり、3領域の多彩なスタッフが有機的に連携する総合サイエンスです。学生は、これら3領域の基本的な専門科目を共通に学ぶと共に、専門性を明確にして1領域を専攻します。国内学生はもちろんのこと、海外、とりわけ途上国地域からの留学生を積極的に受け入れ、国際舞台の最前線で研究活動や実務に携わる有為な人材育成を教育目標としています。

生物圏資源科学専攻

本専攻は、生物資源生産学と生物圏環境学の2領域にまたがる18の研究分野で構成されます。

生物資源生産学領域には、植物育種学、作物生産学、蔬菜・花卉学、果樹生産利用学、動物資源生産学、生物生産システム学、および食資源利用学の7分野があり、人類の生存に必要不可欠な生物資源の生理機能・生態・遺伝的制御の解明とその持続的な利用などに関わる教育と研究指導を行っています。また生物圏環境学領域には、植物寄生菌学、応用動物昆虫学、土壌環境化学、植物環境生化学、森林生態環境学および地域資源保全学の6分野があり、生物圏環境の持続的な制御・管理手法の開発および森林生態環境の持続的保全などに関わる教育と研究指導を行っています。さらに、本専攻には連携大学院方式による専門分野として、植物細胞遺伝情報学、森林微生物機能解析学、昆虫生理機能学、植物生産環境生理学および森林多様性解析学の5分野があり、相互に連携して特色ある教育・研究を展開しています。

本専攻に所属する学生(一般、留学生および社会人)は、いずれか一つの研究分野を選び、その分野の講義、演習、特別研究を必修科目として履修するほか、複数指導教員制による個別指導の下に他の分野や他専攻の講義を選択履修します。本専攻では、このような学際性と専門多重性に配慮したカリキュラム編成によって、生物資源の利用と保全、ならびに生物圏環境の管理と創成に関わる高度な専門知識と実践力を兼ね備えた研究者の養成を目指しています。

生物機能科学専攻

本専攻は、生物機能の解明とそれらの利用・開発に関する分野での先導的な教育・研究を目指しています。最近のバイオサイエンスならびにバイオテクノロジーは、遺伝子の分子生物学を中心に展開していますが、これからはさらに踏み込んで、生物の現象ないし機能の最小単位である「細胞」を構成する主要な生体機能分子について、その静的及び動的挙動を生化学ないし分子レベルでより精密に理解し、得られた知識をもとにその機能を利用する手法の開発が求められます。また、生物資源の特性を活用した生活関連資材の開発も行っていかなければなりません。このような状況のもとで、新しい時代のバイオサイエンスまたはバイオテクノロジーの担い手を養成するために、本専攻では、基本的学問領域である「生命機能情報工学」と応用的学問領域である「生物機能利用工学」とを融合させ、生物・化学・工学の学際的かつ有機的に一体化したカリキュラムを編成しています。

基礎的領域の「生命機能情報工学」は、6つの基幹となる研究分野と1つの連携大学院方式による協力研究分野で構成され、生細胞の動的挙動、情報伝達に重要な機能を持つタンパク質、核酸、酵素や生理活性物質などを対象として、先端的分子生物学の手法を駆使した解析、機能開発に関する教育・研究を行っています。

生物機能を活用する応用領域の「生物機能利用工学」は、5つの基幹研究分野と3つの協力研究分野で構成され、酵素・微生物にとどまらず、植物細胞や動物細胞をも対象とし、さらには生物材料の機能を活用ならびに模倣した材料開発まで広げて教育・研究しています。

このような基礎と応用の教育・研究を通じて、独創性に富み、しかも基礎と応用を同時に見渡せる広い視野に立った学際性を有する研究者の養成を目指しています。

生命産業科学専攻

生命産業科学専攻は、21世紀に重要視されている食料・資源・エネルギー開発と環境保全技術を軸にした生命科学の持続的発展と適正化・技術化を担う実務型博士の養成を図る教育を特徴としています。アカデミック・キャリアパスが一般的であった従来型大学院における大学院生の養成に対して、本専攻では社会科学と自然科学を融合させた6つの教育研究領域・分野を通じて、生命産業の創成およびこれらの素材となる生物資源の確保や流通、さらに新産業の創出や知的財産の確保に資する専門家の育成など、国際的視点から見た戦略や政策の確立の要求にも対応しうるグローバル・スタンダードな研究者の養成を目指しています。

持続環境学専攻

大学院修士(博士前期)課程を修了した学生を対象として、持続環境学の構築をめざす学際深化の教育研究を行います。また、高度なキャリアアップ教育や再教育も行ないます。入学後は、自然科学の解析総合による説明知と人文社会学の超域的な主体知から構成される融合知と、現場を見据えて問題の所在を見極めるフィールド・サイエンスの実践知、並びにこれらの文理融合知と実践知をふまえた臨床方法(症状、診断、治療)を、具体的な課題研究に応用し、展開できる高度な能力を涵養します。修了後は、持続環境学に立脚した高度な学究型・実務型研究者として、国際機関、行政、企業、市民団体(NGO、NPO等)、教育研究機関などで活躍することになります。

先端農業技術科学専攻

現在日本の農業は、食料の安定供給、食の安全性、環境負荷の低減等を実現し、かつ農業生産力の向上と農業体質を強化することが求められており、研究現場ではこれに資する農業生産技術の開発を総合的・効果的に進めることが強く期待されています。このためには、先端農業技術を考究し、十分に現場で応用できる人材の養成が必要です。

本専攻は、博士後期の独立専攻であり、筑波研究学園都市に位置する独立行政法人「農業・食品産業技術総合研究機構」に在職する研究者が連係大学院教員として運営に当たり、先端農業技術料学、とくに新機能や環境調和型農業に適合する作物、果樹、花きの新遺伝資源の作出と利用、農業科学と情報科学を融合するフィールドインフォマティクス、生産・管理システム、家畜生産機能制御の各研究分野において、博士前期課程(修士課程)までに学んだことを当分野に活かして発展させようとする学生を対象に研究指導を行い、前掲の人材を養成し社会に送り出すことを目的としています。

【区分制前期】

地球科学専攻

地球科学専攻では、地球科学に関する深い専門性をもった研究者、高度専門職業人の養成と、幅広い知識と視野をもって知識基盤社会を支える知識人の育成を目的としています。多様な地球環境とその46億年にわたる変遷という幅広い事象をあつかう地球科学のなかで、各人の専門的性を深めていくことができるよう、本専攻では異なる視点をもつ二つの領域を設け、研究・教育活動を行っています。一つは、地球表層圏における多様な自然環境と人間活動、およびそれらの相互作用について探求する地球環境科学領域、もう一つは、地球の誕生から現在までの歴史と仕組みについて究明する地球進化科学領域です。また、二つの領域を融和させたカリキュラムにより、地球科学全般についての知識と幅広い視野を修得することができます。

生物科学専攻

生物科学専攻は、多様性生物科学、細胞生物科学、分子生物科学の3領域において独創的な研究の遂行に必要な研究能力とその基盤となる豊かな学識を 持つ研究者および高度職業人の養成を目的としています。基礎生物科学を中心としていますが、前期課程においては応用も視野に入れた教育研究活動を 展開しています。
多様性生物科学領域には生物進化の道筋の解明を目指す系統分類・進化学や個体、集団、群集レベルに見られる現象の理解を目指す生態学などの分野があります。
細胞生物科学領域には細胞内情報伝達ネットワークの解析から、細胞間相互作用に基づく個体レベルでの生命現象の解明を目指す 細胞学、発生学、生理学、遺伝学などの分野があります。
分子生物科学領域には遺伝情報や分子間相互作用に基づく、分子レベルの普遍的な生命現象を 研究対象にする分子生物学、遺伝情報学、代謝生理学などの分野があります。

これら3領域はそれぞれ独立したものではなく、相互に補完し合いながら教育研究を推進する体制となっています。また本専攻は、筑波研究学園都市や 東京都内の研究水準の高い研究機関(産業技術総合研究所、理化学研究所、農業生物資源研究所、東京都医学総合研究所、国立感染症研究所など)と 連携大学院方式による協力関係を結んで広範な教育研究活動を行っています。3領域それぞれにこれら研究機関に所属する研究者が客員教員として担当する分野があり、学生を受け入れています。

生物資源科学専攻

前期博士課程である本専攻は、農・生物・食糧・環境に関係する生命科学分野において、後期博士課程に進学し深い専門的研究を行う研究者および幅広い専門知識と修士の学位を修得して社会に貢献する人材の養成を目的としている。生物資源科学を基礎とする農林生物学領域・農林社会経済学領域・生物環境工学領域・応用生命化学領域の4領域とバイオシステム学コースから構成され、それぞれ、生物資源関連分野と生命産業関連分野で、研究者、高度・実務型職業人として活躍する人材養成のための基礎教育が行われる。この他、国際協力機構(JICA)との連携による有識・実務経験のある外国人留学生(定員10名)を対象とした「持続的農村開発コース」および本学との交流協定実績を持つアジア諸国の外国人留学生(国費研究留学生4名を含む定員15名)を対象とした「国際連携による持続的農業開発エキスパート養成プログラム」が開設されている。

環境科学専攻

本専攻は、多様な入試制度によって学生を受け入れて、キャリアアップ教育や再教育の体制を強化しています。入学後は、自然科学の解析総合による説明知と人文社会学の超域的な主体知、現場を見据えて問題の所在を見極めるフィールド・サイエンスの実践知、ならびにこれらの文理融合知と実践知をふまえた臨床方法(症状、診断、治療)を、具体的な課題研究に応用し、展開できる基礎能力を涵養します。

修了後は、環境系の高度専門職業人として、国際機関、行政、企業、市民団体(NGO、NPO等)、研究機関などで活躍するか、あるいは、高度な学究型・実務型研究者をめざして博士後期課程に進学することが期待されています。

国際連携持続環境科学専攻

熱帯アジア地域の諸現象・諸課題への強い関心、自然科学又は社会科学の基礎的な素養と分野統合型の協働精神を持ち、地球規模課題に対して環境科学的アプローチによる解決を通じて持続可能な社会を創出する強い意志を持つ学生を求めます。

山岳科学学位プログラム

山岳科学学位プログラムは、筑波大学・信州大学・静岡大学・山梨大学の4大学が連携する新たな大学院(博士前期課程)です。山岳地域を取り巻く環境問題の解決や山岳生態系の持続的管理などに対応できる人材育成を目指しています。