研究室にようこそ!

個性豊かな研究室を紹介します。

(番外編)研究室にようこそ!
~百貨店の化石から飛び出した研究の足跡~

生物圏変遷科学分野/ 地史学・古生物学分野

「街化石」をご存知ですか?都市の建造物の壁や床に使われている石材の中にはいっている化石で、都市化石とも呼ばれています。東京都内には多くの街化石が存在していて、化石愛好家の方による独自のマップが作られ、また小学校の教材としても利用されています。

今回は、この街化石から飛び出した「研究室にようこそ!」の番外編としてご紹介します。

きっかけは、都内の老舗百貨店からの一件のメールでした。担当者から「昨今の古生物学研究の人気から、館内の化石をテーマにした企画を検討するにあたり、自社の文献や資料について調べているが、大学に当時の詳細な記録はないでしょうか」との連絡でした。昭和10年に建築され国の重要文化財にもなっているその百貨店では、来館されたお客様に館内中央ホールの内装に使われているイタリア製大理石の説明をする際、その中に無数に散らばる化石について「昭和50年代に約1万個のアンモナイトやべレムナイトの化石を筑波大学古生物学研究室の先生方に調査検出いただいた」と代々案内しているそうです。

「化石」は過去に生息していた生き物の体の一部や、糞(糞化石)や足跡(生痕化石)など、その時代に生きていた痕跡が地層から掘り出されたもの。その中でもアンモナイトは示準化石と呼ばれ、その地層の年代を特定する指針となる化石として知られています。そして、アンモナイトといえば、恐竜と同じ頃に繁栄した古生物です。

 

昭和50年代というと、既に当時を知る教職員は学内にはおりません。40年以上も経過し大学組織も改編されて、研究分野も名称が変わっています。でも、もしかしたら、数年前に退職された古生物研究の先生が何かご存知かもしれないと、指田勝男先生(筑波大学名誉教授) 連絡したところ、偶然にもその研究調査を担当したご本人だったのです。

     指田勝男名誉教授

指田先生が百貨店の化石調査を行なったのは大学助手となった1987年ですが、その年、カナダ・アルバータ州では19歳の女子学生が恐竜の胎児の化石と卵化石を発見し、翌1988年には、日本国内でも後に「日本最古の恐竜卵殻化石」として判明する卵化石が岐阜県高山市で化石ハンターによって発見されました。この卵化石については、本学の田中康平先生(生物圏変遷科学分野/ 地史学・古生物学分野 助教)が調査協力を行ないました。

指田先生は、大学院生たちとともに「各階、各階段に沿って地質調査と同じ要領で地図を作り、化石の入っている岩石の記載、化石のチェックを行い、化石等の説明文を書いた」とのこと。ただ残念なことに、研究室の引っ越しや東日本大震災、退職時の荷物整理でほとんどの資料は処分されて残っていないと思うとのことでした。

指田先生から百貨店の調査をしたお話を伺っていた上松佐知子先生(生物圏変遷科学分野/ 地史学・古生物学分野 准教授)は、この百貨店の化石を大学でも授業の一環で学生たちとともに見学に行っており「やはり良いビルには良い石材が使われていて、見事な化石がたくさん見られ、大変良い巡検になっている」と話しています。

実際に現場に立って、百貨店のきらびやかな館内で目を凝らして見ると、大理石の中に大小様々な渦巻き模様のアンモナイトが見えてきます。すると、40年前やはり同じように壁の化石を追って調査作業をしている研究者たちの姿もまた化石のように浮かび上がってくるようです。

筑波大学古生物学研究室では、日々素晴らしい研究成果を積み上げています。ご興味をある方はぜひアクセスしてみてください。

 

参考WEBページ


地球進化|地球科学|筑波大学 (tsukuba.ac.jp)

 

本稿作成にあたり、指田勝男名誉教授、松本宏名誉教授にご協力およびご助言をいただきました。心より感謝申し上げます。