教育・研究トピックス

丸山優樹さん:セネガル・サンルイでの半年間の滞在記録 ①

生命環境科学研究科
国際地縁技術開発科学専攻
3年
丸山 優樹

 2019年9月16日から約13ヶ月の予定で、博士論文に必要な調査を実施するために、西アフリカのセネガルに滞在を開始した。本滞在は、一般的な現地大学への留学とは異なり、国際研究機関(Africa Rice Center)のインターンシップ制度を活用したもので、自ら計画した調査計画に基づき、現地研究者と研究を推進する、主体的な意味合いの強いプログラムである。そのため、調査に関わる準備はもちろんのこと、アパート探しやインターネット回線の契約など生活環境の整備も自ら行う必要があった。
しかし、これまで自宅から通っていた筆者にとっては、人生初の一人暮らしがセネガル。その上、公用語であるフランス語もほとんど喋れない有様。そのような、右も左も分からない状況の中で、多くの人の助けをかりながら、1つ1つ問題(課題)を解決する日々は、日誌のネタに事欠かない、大変充実したものであった。
そして、現地の生活に慣れてきた頃、世界に蔓延した新型コロナウイルスにより、当初の滞在予定を約7カ月短縮しての緊急帰国。この帰国は、空港封鎖状況下での日本と韓国の大使館の協力によって実現したチャーター便を利用したものであり、緊急時における自身の危機管理意識を見直す大変貴重な体験となった。
このような半年間のセネガル滞在記録ならびに緊急帰国後の研究活動に関して、以下の6項目に分けて報告する。

 

セネガルはどんな国?サンルイはどんな都市?

2018年に開催されたFIFAワールドカップにて、決勝トーナメント進出に向け、日本と熾烈な争いを繰り広げたセネガル。この時、初めて国名を聞いた人も多いはず。セネガルは西アフリカ地域に属し、人口1,541万人・面積約197,000㎢(日本の約半分)とアフリカ地域では比較的小さな国である。また、西岸部が大西洋に面しており、鉱物資源(銅・金)や農・水産物の貿易が主要産業となっている。農産物に着目すると、北部のセネガル川流域での水稲・サトウキビ栽培や中部での落花生・綿花の栽培が盛んである(図1)。

 

図1: セネガルの概略図

 2012年には選挙による民主的な政権交代を実現したことに象徴されるように、西アフリカ諸国の中でも大変治安の良い国である。
そして、筆者が滞在していた都市サンルイ(Saint-Louis)は、首都のダカールから北へ300kmほど移動した(車で約4時間)、モーリタニアとの国境付近に位置する。同都市はフランス領時代は首都に指定され、交易の中心地として栄えた。現代でも植民地時代に建てられたコロニアル様式の建造物が数多く残っており、2000年には世界遺産に登録された。その他にもエッフェル塔で有名なエッフェルによってデザインされたフェイデルブ橋(写真1)や日本でも有名なサン=テグジュペリが郵便飛行士時代に宿泊し、「星の王子様」を執筆したとされるホテルも現存する(諸説あり)(写真2・3)。そのため、冬季には避寒地として多くの欧米人が訪れる観光名所である(写真4)。

 

    写真1: フェイデルブ橋   写真2: サン=テグジュペリが宿泊したとされるホテルの中庭

 

     写真3: 「星の王子様」にも出てくるバオバブの木  写真4: 世界遺産サンルイの街並み

人生初の一人暮らし

世界遺産の街で人生初の一人暮らしを開始すべく、まずはアパート探しに注力した。日本では不動産屋に行き、お勧めのアパートを探すことが一般的だが、サンルイにはそもそも不動産屋が存在しない。そのため、アパートのオーナーや物件に詳しい人々に直接相談して探す必要がある。これは、初めて滞在し、現地公用語であるフランス語も喋れない筆者には、ハードルが高い。
しかし、幸いにもセネガルに向かう飛行機の中で、日本の大学に留学経験のあるセネガル人の男性に出会い、その人が休暇を使って物件探しを手伝ってくれた。この奇跡的な出会いのおかげで、物件探しを開始するも、一人暮らしに適したサイズのアパートは少なく、ほとんどが家族向けの2LDK以上。さらに中心地に近づくにつれて、歴史的な建造物が多く、お部屋もボロボロ。4日間で20件以上のアパートを見て回った後、最後の最後に1LDKで家具付きのアパートを発見。中心地から車で5分程度の場所ではあったが、建物も新しく希望通りの物件であった(写真5)。

アパートが見つかった後は、生活環境の整備。英語と片言のフランス語、そして僅かなウォロフ語(現地語)をごちゃ混ぜにした奇妙な言語を駆使することで、タクシーを乗り回し、地元の人に聞きまくり、生活用品の購入、インターネット回線の契約など、課題を1つ1つこなしていった。
しかし一難去ってまた一難の日々は続く。建物は奇麗に見えても、造りが雑なために隙間が多い。そのため、雨漏りは日常茶飯事であり、さらに就寝後は蚊との闘いが繰り広げられた(写真6)。

写真5: 契約したアパートの内装・外装

写真6: 人生初の蚊帳を購入(これによって蚊との熾烈な戦いに終止符が打たれる)

 

セネガル・サンルイでの半年間の滞在記録 ②へ続く